知らないと恥ずかしい「御社」「貴社」の使い分け|採用担当者が見るポイントとNG例を徹底解説

知らないと恥ずかしい「御社」「貴社」の使い分け|採用担当者が見るポイント

転職活動において「御社」と「貴社」の使い分けは、相手への敬意を示すための基本的なビジネスマナーです。「御社(おんしゃ)」は面接や電話など、対面で話す際の「話し言葉」として使用します。一方、「貴社(きしゃ)」は履歴書やメールなど、文字で伝える際の「書き言葉」として用いるのが正しい使い方です。この二つを混同すると、社会人としての常識を疑われ、選考でマイナスな印象を与えかねないため、シーンに応じて正確に使い分けることが極めて重要です。

この記事のポイント

インフォグラフィック:「御社」と「貴社」の使い分け
「御社」と「貴社」の使い分け
転職・就職活動の基本マナー
御社
[おんしゃ]
話し言葉
利用シーン
  • 面接:「御社の〇〇という理念に共感しました。」
  • 電話:「〇〇の件で、御社にご連絡いたしました。」
  • 説明会:「御社で活躍されている方の特徴を教えてください。」
貴社
[きしゃ]
書き言葉
利用シーン
  • 履歴書:「貴社の発展に貢献したいと考えております。」
  • メール:「貴社規定に従いますので、よろしくお願いいたします。」
  • 送付状:「末筆ながら、貴社の益々のご清栄をお祈り申し上げます。」
【豆知識】こんな表現も!
銀行の場合
話し言葉: 御行
書き言葉: 貴行
病院の場合
話し言葉: 御院
書き言葉: 貴院
学校の場合
話し言葉: 御校
書き言葉: 貴校
  • 御社(おんしゃ):面接や電話、会社説明会などで使う「話し言葉」
  • 貴社(きしゃ):履歴書、職務経歴書、メール、チャットで使う「書き言葉」
  • 使い分けの理由は、同音異義語(記者、汽車など)との混同を避けるため
  • 間違えても慌てず冷静に訂正すれば大きな問題にはなりにくい
  • 銀行は「貴行」、学校は「貴校」など、業界特有の表現も存在する
  • 「弊社」「当社」は自社を指す言葉であり、応募先企業には絶対に使わない
  • この使い分けは、応募者のビジネスマナーと社会人基礎力を示す指標となる
目次

なぜ転職活動で「御社」と「貴社」の使い分けが重要なのか【知らなかったでは済まされない3つの理由】

採用担当者は応募者のビジネスマナーを厳しくチェック。使い分けができないと社会人基礎力への疑問を抱かせる。

「たかが言葉遣いの一つ」と考える方もいるかもしれませんが、転職活動というフォーマルな場において、「御社」と「貴社」の使い分けは、あなたが思っている以上に重要です。採用担当者は、応募者のスキルや経験だけでなく、その人物が持つ社会人としての基礎力やマナーも厳しくチェックしています。この使い分けができないだけで、「ビジネスマナーが身についていない」「注意力が散漫な人物かもしれない」といったネガティブな印象を与えてしまうリスクがあるのです。

社会人としての基礎力・ビジネスマナーの証明になるから

採用担当者は、日々多くの応募者と接しています。その中で、正しい言葉遣いができることは、特別なアピールポイントにはならないかもしれませんが、できていない場合は明確なマイナスポイントとなります。特に、一定の社会人経験を持つ転職者であれば、できていて当然と見なされるレベルのビジネスマナーです。

これができていないと、「前職ではどのような教育を受けてきたのだろうか」「顧客や取引先に対して失礼な言動を取るのではないか」といった懸念を抱かせてしまいます。逆に、自然かつ正確に使いこなすことで、丁寧で信頼できる人物であるという印象を与え、円滑なコミュニケーション能力を持っていることの証明にも繋がります。

相手(応募先企業)への敬意と配慮を示すため

言葉遣いは、相手への敬意を表現するための最も基本的なツールです。応募先企業に対して、尊敬の念を込めて「御社」や「貴社」という敬称を用いることは、その企業で働きたいという真摯な気持ちの表れです。適切な言葉を選ぶという行為そのものが、「私はあなたの会社を深く理解し、尊重しています」というメッセージになります。

例えば、あなたが誰かから手紙をもらった時、自分の名前を間違えられていたらどう感じるでしょうか。少しがっかりしたり、雑に扱われていると感じたりするかもしれません。それと同じで、企業という人格に対して、話し言葉と書き言葉の敬称を間違えることは、相手への配慮が欠けていると受け取られかねません。

他の応募者との差別化(悪目立ちの防止)

転職活動は、他の候補者との相対評価で合否が決まります。あなたのスキルや経験が他の候補者とほぼ同等だった場合、最終的に何が決め手になるでしょうか。それは、ロジカルな思考力やポテンシャルといった要素に加え、「この人と一緒に働きたいか」という人間的な側面です。

多くの応募者が完璧なマナーで臨む中で、一人だけ「御社」と「貴社」を間違えていたら、それは非常に目立ちます。「注意力が足りない」「準備不足」といったレッテルを貼られ、他の候補者よりも一歩後れを取ってしまう可能性があります。特に競争率の高い人気企業では、こうした小さなミスが命取りになることも少なくありません

「御社」と「貴社」の基本的な意味と明確な違い

御社は話し言葉、貴社は書き言葉。同音異義語の混乱を避けるためのシンプルなルール。

「御社」と「貴社」は、どちらも相手の会社を敬って使う言葉(尊敬語)である点では共通しています。しかし、その使われる場面が明確に異なります。この違いを理解することが、正しい使い分けへの第一歩です。

御社(おんしゃ):話し言葉での使用シーン

「御社」は、主に口頭でのコミュニケーション、つまり「話し言葉」として使用されます。面接官との対話、電話でのやり取り、会社説明会での質疑応答など、声に出して相手の会社を指す場合に用いるのが適切です。

なぜ話し言葉では「御社」が使われるのでしょうか。それは、「きしゃ」という音には「記者」「汽車」「帰社」など、多くの同音異義語が存在するためです。会話の中で「きしゃ」と発音すると、文脈によってはどの意味で使っているのかが瞬時に判断しづらく、聞き手に混乱を与えてしまう可能性があります。一方、「おんしゃ」には同音異義語がほとんどないため、口頭でも明確に意味が伝わります

  • 面接での対話
  • 電話での問い合わせ
  • 会社説明会での質疑応答
  • Web面接・オンライン面談

貴社(きしゃ):書き言葉での使用シーン

「貴社」は、文章の中、つまり「書き言葉」として使用されます。履歴書、職務経歴書、送付状、メール、お礼状など、文字で相手の会社を表現する際に用います。

文章であれば、漢字で「貴社」と表記されるため、同音異義語と混同する心配がありません。「貴」という漢字には「相手への敬意を示す」という意味が込められており、文章として残るフォーマルな書類やメールにおいては、より格式の高い「貴社」が適切とされています。

  • 履歴書・職務経歴書
  • 送付状・添え状
  • メール・チャットでの連絡
  • お礼状・各種書類
スクロールできます
種類読み方使われる場面具体例
御社おんしゃ話し言葉面接、電話、会社説明会、Web面接
貴社きしゃ書き言葉履歴書、職務経歴書、メール、送付状

この「話し言葉か、書き言葉か」というシンプルなルールさえ覚えておけば、使い分けに迷うことはほとんどなくなります。

【シーン別完全解説】「貴社」「御社」の正しい使い方と例文集

転職活動で遭遇するすべてのシーンを網羅。履歴書から面接まで具体的な例文で完全マスター。

【書き言葉編】「貴社」を使う5つの具体的場面

「貴社」は、文字として記録が残るすべての公式な文書で使用します。ここでは、転職活動で遭遇する具体的な5つのシーンを取り上げ、すぐに使える例文とともに解説します。

1. 履歴書(本人希望記入欄など)

履歴書は、あなたのプロフィールを伝える公式な書類です。特に、本人希望記入欄や通勤時間、扶養家族などの欄で企業名を記す際に使用します。

例文(本人希望記入欄)
「営業職を希望いたします。これまでの経験を活かし、貴社の事業拡大に貢献できることを楽しみにしております。」
「貴社の規定に従います。一日も早く貴社の一員として貢献できるよう、精一杯努力する所存です。」

2. 職務経歴書(志望動機・自己PRなど)

職務経歴書は、あなたのスキルと経験をアピールする最も重要な書類の一つです。志望動機や自己PRの中で、応募先企業への熱意や貢献意欲を示す際に「貴社」を使いましょう。

例文(志望動機)
「貴社の『挑戦を歓迎する』という企業文化に深く共感し、志望いたしました。私の持つ〇〇のスキルは、貴社が現在注力されている△△事業において必ずやお役に立てると確信しております。」

3. 送付状・添え状

履歴書や職務経歴書を郵送する際に同封する送付状(添え状)は、あなたの第一印象を決める重要な文書です。

例文(本文)
「拝啓 貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。この度、〇〇(求人媒体名)にて貴社の営業職の募集を拝見し、是非応募させていただきたく、下記の書類をお送りいたしました。」

4. メール(問い合わせ、応募、面接日程調整、お礼など)

現代の転職活動において、メールは最も頻繁に使用するコミュニケーションツールです。件名、宛名、本文、署名に至るまで、すべての文章で「貴社」が使われます。

例文(面接日程調整)
件名:面接日程のご調整の件/氏名

株式会社〇〇
人事部 〇〇様

お世話になっております。〇月〇日に面接のお時間をいただくことになりました、〇〇(氏名)です。

この度は、面接の機会をいただき、誠にありがとうございます。

ご提示いただきました下記の日程にて、貴社へお伺いしたく存じます。
[日時] 〇月〇日(〇)〇〇:〇〇~

貴社にお伺いできることを心より楽しみにしております。

5. チャット形式の連絡ツール

近年、採用管理システム(ATS)に付属するチャット機能や、ビジネスチャットツールを使って応募者と連絡を取る企業も増えています。メールよりもカジュアルな印象がありますが、これも文字でのコミュニケーションであるため、原則として「貴社」を使用するのが最も安全で丁寧です。

例文(チャットでの日程調整)
「ご連絡いただきありがとうございます。承知いたしました。ご提示いただいた日程で問題ございません。貴社にお伺いできるのを楽しみにしております。」

【話し言葉編】「御社」を使う4つの具体的場面

「御社」は、声に出してコミュニケーションを取る場面で使います。対面だけでなく、電話やオンラインも含まれることを意識しましょう。

1. 面接(自己紹介、志望動機、質疑応答、逆質問など)

面接は、「御社」を最も多く使う場面です。自己紹介から始まり、志望動機、長所・短所の説明、質疑応答、そして最後の逆質問に至るまで、一貫して「御社」を使いましょう。

例文(自己紹介・志望動機)
「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。〇〇と申します。前職では〇〇の業務に5年間従事してまいりました。その中で培った〇〇のスキルを活かし、御社の△△という事業領域で貢献したいと考え、本日は参りました。」

例文(逆質問)
「もし御社にご縁をいただけた場合、入社までに特に学習しておくべき分野やスキルセットはございますでしょうか。」
「御社でご活躍されている社員の方々に共通する資質や行動様式などがございましたら、ぜひお聞かせいただきたいです。」

2. 電話(問い合わせ、日程調整、内定連絡など)

企業へ電話で問い合わせをする際や、面接日程の調整、内定の連絡を受けた際の返答など、電話越しの会話でも「御社」を使います。顔が見えないからこそ、より一層丁寧な言葉遣いが求められます

例文(電話での問い合わせ)
「お忙しいところ恐れ入ります。私、〇〇(求人媒体名)を拝見し、御社の求人に応募させていただきました〇〇と申します。選考状況についてお伺いしたく、ご連絡いたしました。」

3. 会社説明会・座談会

会社説明会や、社員と話す機会のある座談会も、選考の一部と捉えるべきです。質疑応答の場面などで発言する際は、必ず「御社」を使いましょう。多くの学生や他の応募者がいる中で、正しい言葉遣いができることは、良い印象を与えるチャンスです。

4. オンライン面接

コロナ禍以降、急速に普及したオンライン面接も、対面の面接と全く同じです。画面越しの会話であっても、話し言葉である「御社」を使用します。通信環境によっては音声が不明瞭になる可能性もあるため、ハキハキとした声で、意識的に「御社」と発音することが大切です。

転職者必見!「御社」「貴社」でよくある間違いと完璧な対処法

ミスは誰にでも起こり得る。重要なのは間違えた後の冷静な対処とリカバリー術。

転職者が陥りがちな4つのNG例とその対策

知識として知っていても、実際の場面でうっかり間違えてしまうことは誰にでも起こり得ます。ここでは、転職者が陥りがちな間違いと、具体的なNG例文を挙げて解説します。

NG例1:面接で「貴社」と言ってしまう

これは最も多い間違いです。緊張していると、つい書き言葉である「貴社」が口から出てしまうことがあります。

NG例文(面接)
「貴社の〇〇という製品に将来性を感じ、志望いたしました。」
OK例文:「御社の〇〇という製品に将来性を感じ、志望いたしました。」

なぜNGか?
前述の通り、「きしゃ」は同音異義語が多く、聞き手である面接官に一瞬の混乱や違和感を与えます。「ビジネスマナーの基本が身についていない」と判断されるリスクがあります。

NG例2:メールや履歴書で「御社」と書いてしまう

面接対策に集中するあまり、話し言葉の「御社」が頭に残り、文章でも使ってしまうケースです。

NG例文(メール)
「先日は面接のお時間をいただきありがとうございました。御社で働きたいという気持ちが一層強くなりました。」
OK例文:「先日は面接のお時間をいただきありがとうございました。貴社で働きたいという気持ちが一層強くなりました。」

NG例3:「御社様」「貴社様」と二重敬語を使ってしまう

丁寧さを意識するあまり、敬語を重ねてしまう間違いです。「御社」や「貴社」という言葉自体が既に尊敬語であるため、「様」を付ける必要はありません。

NG例文
「御社様の益々のご発展を〜」「貴社様からいただいた資料を〜」
OK例文:「御社の益々のご発展を〜」「貴社からいただいた資料を〜」

NG例4:応募先企業に対して「弊社」や「当社」を使ってしまう

これは非常に稀ですが、重大なミスです。「弊社(へいしゃ)」や「当社(とうしゃ)」は、自分が所属している会社を指す謙譲語・丁寧語です。応募先の企業に使うことは絶対にありません。

NG例文(面接)
「弊社の企業理念に共感しました。」
OK例文:「御社の企業理念に共感しました。」

もし間違えてしまったら?冷静なリカバリー術

どれだけ準備をしても、人間である以上、ミスは起こり得ます。特に緊張する面接の場面で、うっかり「貴社」と言ってしまう可能性はゼロではありません。大切なのは、間違えた後の対応です。パニックにならず、冷静に対処すれば、大きなマイナス評価には繋がらないことがほとんどです。

  • 間違えた直後に気づいた場合:「大変失礼いたしました。『御社』でした。」とすぐに訂正
  • 面接の途中で後から気づいた場合:わざわざ蒸し返さず、その後正しく使用
  • 面接が終わってから気づいた場合:特別なフォローは不要、次回から気をつける
  • メールでの間違いに送信後に気づいた場合:基本的には再送不要

面接官も、応募者が緊張していることは理解しています。むしろ、ミスを正直に認めてすぐに修正できる素直さや冷静さを評価してくれる可能性すらあります。

ワンランク上を目指す!業界別「御社」「貴社」以外の敬称表現完全ガイド

銀行は「貴行」、学校は「貴校」など業界特有の敬称をマスターして他の応募者と差をつけろ。

一般企業であれば「御社」「貴社」で問題ありませんが、応募先が銀行や官公庁、学校などの場合、それぞれに特有の敬称が存在します。これらを正しく使い分けることができれば、「業界研究をしっかり行っている」「高いレベルのビジネスマナーを身につけている」という、非常にポジティブな印象を与えることができます。

銀行・金融機関の場合

銀行・信用金庫の場合

  • 話し言葉:御行(おんこう)
  • 書き言葉:貴行(きこう)
  • 信用金庫の場合:御金庫(おんきんこ)、貴金庫(ききんこ)

例文(面接)
「御行の地域社会に貢献するという姿勢に感銘を受けました。」

例文(履歴書)
「貴行の一員として、地域経済の活性化に貢献したいと考えております。」

省庁・法人・団体の場合

応募先がどのような組織形態かによって使い分けが必要です。

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組織話し言葉書き言葉
省庁(例)御省(例)貴省
官公庁(例)御庁(例)貴庁
組合御組合貴組合
協会御会貴会
財団/社団法人御法人貴法人

学校法人の場合

  • 話し言葉:御校(おんこう)
  • 書き言葉:貴校(きこう)
  • 大学の場合:御学(おんがく)、貴学(きがく)
  • 学院の場合:御学院(おんがくいん)、貴学院(きがくいん)

例文(面接)
「御校の先進的な教育カリキュラムに魅力を感じております。」

病院・医療法人の場合

  • 話し言葉:御院(おんいん)
  • 書き言葉:貴院(きいん)
  • 医療法人の場合:「御法人(おんほうじん)」「貴法人(きほうじん)」も使える

これらの表現は必須ではありませんが、応募先のウェブサイトなどで正式名称と組織形態を事前に確認し、適切な敬称を使えるように準備しておくことで、志望度の高さを伝えることができます。

「弊社」「当社」「小社」との違い|自社を指す言葉を正しく理解する

「御社」「貴社」が相手の会社を指す尊敬語であるのに対し、自分が所属する会社を指す際には「弊社」「当社」「小社」といった言葉を使います。転職活動中、特に在職中に活動している場合、面接で現職(または前職)について話す際にこれらの言葉を使う機会があります。

  • 弊社(へいしゃ):最も丁寧な謙譲語、社外の人に対して使用
  • 当社(とうしゃ):対等な立場で自社を表現する丁寧語
  • 小社(しょうしゃ):過度にへりくだった表現、現在は使用を避ける
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言葉対象種類主な利用シーン
御社・貴社相手の会社尊敬語応募先企業など、社外の相手
弊社・小社自分の会社謙譲語顧客や取引先など、社外の相手
当社自分の会社丁寧語社内の相手、または社外へ毅然と伝えたい時

【重要】応募先企業には絶対に使わない
「弊社」「当社」「小社」は、あくまで自分が所属する(または、していた)会社を指す言葉です。応募先企業に対して使うと、言葉の意味を全く理解していないと判断されてしまいます。

採用担当者の本音|選考における敬語の重要性と評価ポイント

できていて当たり前、できていないとマイナス。言葉遣いは社会人基礎力と志望度を測る重要指標。

採用担当者は、応募者の言葉遣いをどのように評価しているのでしょうか。結論から言えば、「できていて当たり前、できていないとマイナス」というのが基本的なスタンスです。多くの採用担当者は、以下の3つの視点から応募者の言葉遣いをチェックしています。

社会人基礎力(ビジネスマナー)のレベル

正しい敬語を使えることは、社会人として最低限のスキルセットと見なされます。「御社」「貴社」の使い分けは、その中でも特に基本的な項目です。これができないと、「基本的なビジネスマナーが身についていない」「入社後の研修で苦労しそうだ」「顧客対応を任せるのが不安だ」といった懸念を抱かせます。

特に、営業職や接客業など、外部とのコミュニケーションが頻繁に発生する職種では、言葉遣いが直接的に評価に影響します。

志望度の高さと準備の質

丁寧で正しい言葉遣いを心がける姿勢は、「この選考に真剣に取り組んでいる」という熱意の表れと受け取られます。応募する企業のことをしっかりと調べ、敬意を払ってコミュニケーションを取ろうとする態度は、志望度の高さを示します。

逆に、言葉遣いが雑であったり、間違いが多かったりすると、「準備不足」「本気度が低い」と判断されかねません。採用担当者は、スキルだけでなく、自社への想いの強さも見ています。言葉遣いは、その想いを伝えるための重要な手段なのです。

コミュニケーションの円滑さ

ビジネスにおけるコミュニケーションは、相手に敬意を払い、正確に情報を伝達することが基本です。敬語を正しく使えないと、意図が正確に伝わらなかったり、相手に不快感を与えたりして、円滑な人間関係の構築を妨げる可能性があります。

採用担当者は、「この応募者は、入社後に上司、同僚、部下、そして顧客と良好な関係を築けるだろうか」という視点で見ています。正しい言葉遣いは、そのポテンシャルを測るための一つの指標となるのです。

ある大手企業の人事担当者は、「一度や二度の言い間違いで即不合格にすることはありません。しかし、面接全体を通して言葉遣いが乱れていたり、基本的な敬語が使えていなかったりすると、その人の注意力や学習能力に疑問符がつきます。スキルが同程度の候補者が二人いた場合、マナーがしっかりしている方を採用するのは当然です」と語ります。

よくある質問

面接でうっかり「貴社」と言ってしまいました。評価は下がりますか?

一度だけの間違いであれば、致命的な評価ダウンには繋がらないことがほとんどです。面接官も応募者が緊張していることは理解しています。気づいた時点ですぐに「失礼いたしました。『御社』でした」と冷静に訂正すれば、むしろ誠実な印象を与えられます。

メールで「御社」と書いてしまいました。再送して訂正すべきですか?

原則として、訂正のためにメールを再送する必要はありません。特に事務的な連絡であれば、相手も意味を理解してくれるため、そのままで大丈夫です。何度もメールを送る方が、かえって相手の手間を増やしてしまいます。

グループ会社や子会社に応募する場合も「御社」「貴社」で良いですか?

はい、問題ありません。応募している企業が一つの独立した法人であれば、その会社に対して「御社」「貴社」を使います。例えば、A社の100%子会社であるB社に応募する場合、面接やメールではB社に対して「御社」「貴社」と呼びかけます。

外資系企業やベンチャー企業でもこの使い分けは必要ですか?

はい、必要です。たとえ社風がフラットでカジュアルな外資系企業やベンチャー企業であっても、採用選考はフォーマルな場です。日本法人として活動している以上、日本のビジネスマナーに則ってコミュニケーションを取るのが基本です。

アルバイトやパートの面接でも「御社」「貴社」を使いますか?

はい、使うのが望ましいです。雇用形態に関わらず、相手企業への敬意を示すことに変わりはありません。アルバイトやパートの面接であっても、丁寧な言葉遣いができる応募者は好印象を与えます。

「御社」という言葉が堅苦しく感じます。もっと柔らかい表現はありますか?

転職活動というフォーマルな場においては、「御社」「貴社」が最も適切であり、これに代わる柔らかい表現は基本的にありません。「〇〇(企業名)様」という言い方も可能ですが、多用すると冗長に聞こえる場合があります。

履歴書を手書きする場合、「貴社」の文字を間違えたら修正テープを使っても良いですか?

履歴書は公式な応募書類であり、修正テープや修正液の使用は避けるべきです。書き損じた場合は、新しい用紙に一から書き直すのがマナーです。小さなミスであっても修正の跡があると、「注意力が低い」という印象を与えかねません。

まとめ:正しい言葉遣いで自信を持って転職活動を成功させよう

御社は話し言葉、貴社は書き言葉。このシンプルなルールをマスターして転職成功へ。

本記事では、転職活動における「御社」と「貴社」の正しい使い分けについて、その重要性から具体的なシーン別の例文、間違えた際の対処法まで、網羅的に解説してきました。

最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 御社(おんしゃ):話し言葉(面接、電話、Web会議など)
  • 貴社(きしゃ):書き言葉(メール、履歴書、職務経歴書など)
  • 使い分けは同音異義語の混同を避けるため
  • 間違えても冷静に訂正すれば問題なし
  • 業界特有の敬称(貴行、貴校など)もマスターすると差別化できる
  • 弊社・当社は自社を指すため、応募先企業には絶対使わない

このシンプルなルールは、あなたの社会人としての常識と、応募先企業への敬意を示すための土台となります。たかが言葉遣いと侮らず、これを完璧にマスターすることで、あなたは他の応募者から一歩リードし、採用担当者に「この人は信頼できる」という安心感を与えることができます

転職活動は、あなたの未来を左右する重要なステップです。細部にまで気を配る丁寧な準備が、最終的な成功を引き寄せます。本記事で得た知識を自信に変え、堂々と選考に臨んでください。あなたの転職活動が実りあるものになることを、心から応援しています。

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この記事を書いた人

派遣会社社員として20年の経験を持ち、数多くの転職・キャリア支援を担当。派遣エージェントとして全国の拠点を回り、地域ごとの特色や企業のニーズを熟知。求職者一人ひとりに寄り添い、最適なキャリアの選択をサポートする転職スペシャリスト。

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