第一種・第二種 衛生管理者 徹底ガイド|合格率・難易度から最短取得ロードマップまで完全解説

目次

この記事のポイントまとめ

  • 法律上の必須資格:常時50人以上の労働者を使用する事業場では、必ず衛生管理者を選任する義務がある
  • 高い需要と将来性:企業のコンプライアンス意識向上や働き方改革により、需要は安定かつ増加傾向にある
  • キャリアアップに直結:資格手当や昇進・昇格の要件となるケースが多く、転職市場でも高く評価される
  • 第一種と第二種の違い:対応できる業種が異なる。第一種は全業種対応、第二種は非有害業務の業種に限定される
  • 計画的な学習が合格の鍵:合格率は40~50%台。独学も可能だが、通信講座や講習会の活用が効率的
  • 「意味ない」は誤解:その価値を理解し活用することで、企業と自身の双方に大きなメリットをもたらす

衛生管理者資格は、法律で定められた国家資格であり、労働者の健康と安全を守る専門家として、あらゆる企業で必要とされる極めて価値の高い資格です。特に第一種は、有害業務を含むすべての業種で活動できるため、汎用性と専門性を兼ね備えています。取得するには、学歴に応じた実務経験を満たした上で、安全衛生技術試験協会が実施する試験に合格する必要があります。合格率は例年40%~50%台で、決して簡単ではありませんが、計画的な学習で十分に合格を狙えます。

なぜ今、衛生管理者の価値が高まっているのか?【需要と将来性】

  • 企業のコンプライアンス・リスク管理意識が劇的に向上している
  • 働き方改革とメンタルヘルス対策が企業の最重要課題となっている
  • ESG経営と健康経営への注目が高まり、社会的評価に直結している

「衛生管理者って、昔からある資格でしょ?」そう思われるかもしれません。しかし、現代の日本社会において、その価値はかつてないほど高まっています。その背景には、大きく3つの社会的変化があります。

企業のコンプライアンス・リスク管理意識の劇的な向上

現代の企業経営において、「安全配慮義務」は最も重要なキーワードの一つです。従業員の心身の健康を守ることは、企業の法的かつ社会的な責務とされています。万が一、労働災害や過労による健康問題が発生した場合、企業は莫大な損害賠償責任を負うだけでなく、社会的信用を失墜させるリスクに直面します。

衛生管理者は、この「安全配慮義務」を具体的に実行する中心人物です。専門知識に基づき、職場環境のリスクを特定・評価し、改善策を講じることで、企業を法的なリスクから守ります。いわば、企業の経営基盤を支える「守りの要」であり、その重要性は年々増しているのです。

「働き方改革」とメンタルヘルス対策の重要性

長時間労働の是正、多様な働き方の推進など、「働き方改革」が叫ばれる中で、従業員のメンタルヘルスケアは喫緊の課題となっています。2015年からはストレスチェック制度が義務化され、心の健康問題への対策は企業の成長に不可欠な要素となりました。

衛生管理者は、産業医やカウンセラーと連携し、ストレスチェックの実施支援や、高ストレス者への面接指導の勧奨、職場環境の改善などを通じて、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ役割を担います。従業員が心身ともに健康で、生産性高く働ける環境を構築するプロフェッショナルとして、その専門性が強く求められているのです。

ESG経営と「健康経営」への注目

近年、投資家が企業を評価する上で、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視する「ESG投資」が世界の潮流となっています。この「S(社会)」の中核をなすのが、従業員の健康や安全への配慮です。

経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」など、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」に取り組む企業が急増しています。衛生管理者は、この健康経営を推進する実務担当者として、まさにその中心で活躍することが期待されています。資格の保有は、企業の社会的評価を高める上でも貢献できるのです。

衛生管理者とは?仕事内容と第一種・第二種の本質的な違い

  • 衛生管理者の主な仕事は4つの業務分野に分かれている
  • 第一種と第二種の最大の違いは対応可能な業種の範囲
  • 迷ったら第一種の取得が圧倒的におすすめ

衛生管理者の価値を理解したところで、次に「具体的に何をする人なのか」「第一種と第二種は何が違うのか」という基本を徹底的に解説します。

衛生管理者の主な仕事内容

衛生管理者の職務は、労働安全衛生規則第11条で定められています。要約すると、以下の4つが主要な業務です。

  • 健康に異常がある者の発見及び処置:健康診断結果の確認や、体調不良者からの相談対応など
  • 作業環境の衛生的調査と改善:職場の明るさ(照度)、温度、湿度、換気、騒音などを測定し、問題があれば改善策を講じる
  • 作業条件、施設等の衛生的改善:トイレや休憩室、食堂などの衛生状態の確認、改善
  • 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備:保護マスクや耳栓、救急箱などが適切に管理されているかチェック

そして、これらの業務を遂行するために、少なくとも週に1回は職場を巡視(職場巡視)し、設備や作業方法に危険な点がないかを確認する義務があります。また、安全委員会または衛生委員会(あるいは両方を統合した安全衛生委員会)の構成メンバーとして、月1回の会議で専門的な見地から意見を述べることも重要な役割です。

【最重要】第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違い

この二つの資格の最も本質的な違いは、「対応できる業種の範囲」です。

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資格種類対応できる業種概要
第一種衛生管理者すべての業種有害業務(人体に有害なガス、蒸気、粉じん等を発散する場所での業務)を含む、あらゆる業種の事業場で衛生管理者になることができる
第二種衛生管理者有害業務との関連が少ない特定の業種のみ金融業、保険業、卸売業、小売業など、人体への有害性が比較的低いとされる業種に限定される

なぜ業種で分かれているのか?それは、業種によって労働者がさらされる健康リスクが大きく異なるためです。例えば、化学工場や建設現場では、有害物質の吸引や騒音、粉じんといった特有のリスクが存在します。第一種衛生管理者の試験では、こうした有害業務に関する専門知識(労働衛生(有害業務に係るもの))が問われるため、あらゆるリスクに対応できるのです。

あなたの職場はどちらが必要?

以下の表で、あなたの会社の事業がどちらに分類されるか確認してみましょう。

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区分業種の例
第一種衛生管理者が必要な業種農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸交通業、貨物取扱業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業など
第二種衛生管理者で対応可能な業種情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業、不動産・物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊・飲食サービス業、生活関連サービス・娯楽業、教育・学習支援業など

ポイント:迷ったら「第一種」の取得を目指すのがおすすめです。第一種は第二種の上位互換であり、転職やキャリアチェンジの際に業種の制約がなく、圧倒的に有利になります。

「意味ない」は本当?衛生管理者資格のリアルな価値と5つのメリット

  • 「意味ない」は大きな誤解。正しく理解し活用すれば極めて価値の高い資格
  • 法的需要に裏付けられた安定性と将来性がある
  • キャリアアップ、収入増、転職有利性などの実利的メリットが豊富

インターネットで検索すると、「衛生管理者 意味ない」というネガティブな意見を目にすることがあります。これは本当なのでしょうか?

結論から言えば、これは大きな誤解です。 なぜ「意味ない」と言われることがあるのか、その理由を分析しつつ、それを上回るリアルな価値と5つのメリットを解説します。

なぜ「意味ない」と言われるのか?

  • 業務内容が見えにくいから:総務や人事の担当者が兼務することが多く、「衛生管理者」としての専門業務が他の業務に埋もれてしまうことがある
  • 直接的な利益を生まないから:営業職のように売上を立てる仕事ではないため、その貢献度が数値化しにくい
  • 選任されるだけで活動が少ないケースがあるから:一部の企業では、法律上の義務を果たすためだけに資格者を選任し、実質的な活動をさせていない場合がある

しかし、これらは資格そのものの価値ではなく、企業側の活用方法や個人の意識の問題に起因します。資格の価値を正しく理解し、積極的に活動すれば、以下のような計り知れないメリットを享受できます。

メリット1:法的需要に裏付けられた「安定性」

最大のメリットは、法律(労働安全衛生法第12条)によって設置が義務付けられていることです。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、その規模に応じて定められた人数の衛生管理者を選任し、行政に届け出なければなりません。

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事業場の労働者数選任すべき衛生管理者の数
50人以上 200人以下1人
201人以上 500人以下2人
501人以上 1,000人以下3人
1,001人以上 2,000人以下4人
2,001人以上 3,000人以下5人
3,001人以上6人

この「必ず誰かがやらなければならない」という法的需要が、衛生管理者資格の価値を盤石なものにしています。企業がなくならない限り、この資格の需要もなくなることはありません。

メリット2:キャリアアップと収入増に直結

多くの企業では、衛生管理者資格に対して資格手当を支給しています。相場は月額3,000円~10,000円程度ですが、年間で見れば数万円の収入アップに繋がります。

また、総務・人事部門など管理部門でのキャリアを目指す場合、衛生管理者資格は昇進・昇格の有利な材料となります。部下を持つ管理職にとって、労働安全衛生の知識は必須スキルであり、資格を持っていることでマネジメント能力の高さをアピールできます。

メリット3:転職市場での圧倒的なアドバンテージ

求人情報サイトで「衛生管理者」と検索してみてください。非常に多くの求人が見つかるはずです。特に、事業所の立ち上げや規模拡大を計画している企業にとって、衛生管理者の資格保有者は喉から手が出るほど欲しい人材です。

未経験の業界や職種への転職を考える際も、衛生管理者資格は「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」として強力な武器になります。業種を問わず需要があるため、キャリアの選択肢が大きく広がります。

メリット4:職場の環境改善に貢献できる「やりがい」

衛生管理者の仕事は、同僚や部下が安全で健康に働ける環境を作る、非常に社会的意義の高い仕事です。「職場の照明が暗くて目が疲れる」「休憩室が使いにくい」といった現場の声を拾い上げ、専門知識を基に改善を実現できた時、多くの同僚から感謝されるでしょう。人の役に立っていることを実感できる点は、大きなやりがいに繋がります。

メリット5:自分自身の健康と権利を守る知識が身につく

労働安全衛生法を学ぶことで、労働者として自分自身がどのような権利で守られているのか、会社にはどのような義務があるのかを深く理解できます。これは、不当な労働環境に置かれた際に、自分自身の健康と権利を守るためのリテラシーとなります。この知識は、社会人として生きていく上で一生涯の財産となるでしょう。

衛生管理者資格取得までの完全ロードマップ【5ステップ】

  • 受験資格の確認と証明準備が第一歩
  • 第一種と第二種の適切な選択が重要
  • 試験難易度を理解し、自分に合った勉強法を選ぶ
  • 試験申し込み手続きは早めの準備が必要
  • 合格後の免許申請でようやく衛生管理者として活動可能

ここからは、衛生管理者資格を実際に取得するための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。

【ステップ1】受験資格の確認と証明方法

衛生管理者試験は誰でも受けられるわけではなく、一定の学歴と労働衛生に関する実務経験が必要です。

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学歴労働衛生の実務経験
大学、高等専門学校 卒業1年以上
高等学校、中等教育学校 卒業3年以上
上記以外(学歴不問)10年以上

「労働衛生の実務経験」とは?
「難しそう…」と感じるかもしれませんが、意外と多くの業務が該当します。

  • 健康診断の実施準備、結果の処理
  • 作業環境測定(騒音、照度など)の立ち合い、結果の評価
  • 労働者の健康相談、保健指導
  • 事業場の施設・設備の衛生的な点検
  • 安全衛生委員会への参加

総務や人事、あるいは工場のライン管理などの業務経験があれば、該当する可能性が高いです。この実務経験は、会社の代表者(社長や事業所長)による証明が必要になります。申込時に専用の「事業者証明書」を提出する必要があるため、事前に上司や人事部に相談しておきましょう。

【ステップ2】第一種と第二種の適切な選び方

前述の通り、あなたの会社の業種によって必要な資格が異なります。

  • 現在の職場で選任されることが目的なら:自社の業種を確認し、必要な方(第一種または第二種)を選びましょう
  • 転職やキャリアアップを視野に入れるなら:迷わず第一種を選びましょう

大は小を兼ねます。第一種を持っていれば、どんな業種の企業にもアピールできます。

試験範囲も、第一種は第二種の範囲を完全に含んでいます。そのため、学習内容に大きな違いはなく、有害業務に関する分野が追加されるだけです。難易度は上がりますが、得られるメリットを考えれば、第一種に挑戦する価値は非常に高いと言えます。

【ステップ3】試験の難易度と合格に向けた勉強法

衛生管理者試験の合格率は、例年以下の水準で推移しています。

  • 第一種衛生管理者:約45%
  • 第二種衛生管理者:約55%

合格率だけ見ると「半分近くが合格するなら簡単?」と思うかもしれませんが、これは罠です。受験者の多くは、会社での必要性から受験する社会人であり、一定の学習を積んできた人たちです。その中での合格率40~50%台は、決して油断できない難易度であることを示しています。

一般的に、合格に必要な勉強時間は60時間~100時間程度と言われています。1日1時間の勉強なら約2~3ヶ月、土日に集中して勉強するなら1ヶ月半~2ヶ月が目安となります。

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勉強法メリットデメリットこんな人におすすめ
独学・費用が最も安い(テキスト代のみ)
・自分のペースで学習できる
・モチベーション維持が難しい
・疑問点を質問できない
・法改正などの最新情報を見逃すリスク
・自己管理能力が高い人
・コストを最優先したい人
通信講座・体系化された教材で効率的に学べる
・質問サポートがある
・スマホ学習など隙間時間を活用しやすい
・独学よりは費用がかかる
・講座選びが重要になる
・効率的に合格を目指したい人
・働きながらで学習時間が限られている人
講習会・プロの講師から直接学べる
・集中できる環境
・疑問点をその場で解決できる
・費用が最も高い
・日程や場所が拘束される
・短期間で集中して学びたい人
・一人では学習が進まない人

どの勉強法を選ぶにせよ、最も重要なのは過去問題集を繰り返し解くことです。衛生管理者試験は、過去問と類似した問題が多く出題される傾向があります。最低でも過去5年分の問題を3回以上は解き、すべての選択肢について「なぜ正解なのか」「なぜ不正解なのか」を説明できるレベルを目指しましょう。

【ステップ4】2025年度最新|試験日程と申し込み手続きの全て

衛生管理者試験は、全国7ヶ所の安全衛生技術センターで、原則として毎月1回以上実施されています(一部センターを除く)。

試験日程は、センターごとに異なります。必ず安全衛生技術試験協会(JIHA)の公式サイトで、受験を希望するセンターの最新の試験日程を確認してください。人気の時期はすぐに満席になるため、早めの計画が重要です。

  • 受験申請書の請求:公式サイトからダウンロードするか、郵送で取り寄せます
  • 受験申請書の作成:必要事項を記入し、証明写真(6ヶ月以内に撮影したもの)を貼り付けます
  • 添付書類の準備:事業者証明書(会社に証明してもらう)、卒業証明書(原本)など、学歴を証明する書類
  • 受験料の支払い:受験料(第一種・第二種ともに6,800円 ※2025年時点の参考情報)を支払い、証明書を申請書に貼り付けます
  • 申請書の提出:受験を希望する安全衛生技術センターへ、郵送(書留)または持参して提出します

手続きはやや煩雑なため、余裕を持って準備を開始しましょう。

【ステップ5】免許申請と衛生管理者としてのキャリア

試験に無事合格したら、それで終わりではありません。合格通知書(ハガキ)を受け取った後、東京労働局に免許申請を行う必要があります。申請後、約1ヶ月程度で「衛生管理者免許証」が交付され、晴れて衛生管理者として活動できるようになります。

免許取得後は、社内で衛生管理者に選任されるのが第一歩です。そこから、安全衛生委員会で積極的に発言したり、職場巡視で改善提案を行ったりすることで、あなたの評価は着実に高まっていくでしょう。将来的には、安全衛生部門の責任者や、コンサルタントとして独立する道も開けるかもしれません。

まとめ:衛生管理者はあなたのキャリアと職場を変える価値ある国家資格

この記事では、衛生管理者資格の真の価値から、具体的な取得方法、そしてよくある疑問まで、網羅的に解説してきました。

衛生管理者は、単に法律で定められているから必要な「義務的な資格」ではありません。

  • 企業の健全な成長を支え、経営リスクから会社を守る「守護者」である
  • 共に働く仲間たちの心身の健康を守り、働きやすい環境を作る「貢献者」である
  • そして何より、あなた自身のキャリアの選択肢を広げ、市場価値を高める「強力な武器」である

「意味ない」という言葉は、この資格の本質的な価値を見ようとしない人の意見に過ぎません。今、あなたは資格の本当の価値を理解し、その取得がもたらす未来を具体的にイメージできるようになったはずです。

さあ、まずは第一歩として、安全衛生技術試験協会の公式サイトで最新の試験日程を確認し、あなたの挑戦のスケジュールを立ててみてはいかがでしょうか。この資格は、間違いなくあなたのキャリアと職場を、より良い方向へと変える力を持っています。

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この記事を書いた人

派遣会社社員として20年の経験を持ち、数多くの転職・キャリア支援を担当。派遣エージェントとして全国の拠点を回り、地域ごとの特色や企業のニーズを熟知。求職者一人ひとりに寄り添い、最適なキャリアの選択をサポートする転職スペシャリスト。

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